郷土料理研究部 LOCAL FOOD RESEARCH CLUB
室町時代に京都の公家で誕生した雑煮は、諸大名や武将によって自国へ持ち帰られ、各地域の多様な食材と合わさり、全国津々浦々、様々な形へと姿を変えていった。中でも今回は、私たちに馴染み深い博多雑煮の歴史を紐解いていきたいと思う。
博多では江戸時代中期に雑煮が流行し、この頃から庶民にも食べられるようになった。当時は鯛などを含め約12品の具材が入っていたという。そして大正〜昭和初期にかけて現在のブリやカツオ菜が入った形になったと言われている。博多商人の気前の良さから他の地域に比べて具材が多く、豪華なのが特徴の一つ。出汁にはアゴを使用し、すまし仕立てで風味が香る上品な味わいだ。
具材の中でもブリについては興味深い話が多い。当時の博多では年末になるとお世話になった人にこも巻きのブリや酒樽を贈る風習があった。面白いことに、軒先に吊るされたブリの数や、家の外に置かれていた酒樽の数によって、一年の景気をうかがっていたらしい。そして正月に客が来るたびに軒先のブリを人数分切り取って、雑煮に使用していた。
取材・文/藤﨑智子 撮影/目野つぐみ
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