第4回 一九ラーメン 老司店
味を守りながら、味を変える。合言葉は一生ラーメン。
メニューを見るのが好きだ。注文を終えるとすぐに下げてしまう店もあるが、そういう時は「次にオーダーする料理を決めたいから」と言って、側においておき、眺める。記されている料理たちを勝手にコース仕立てにしてみたり、おすすめと書かれた料理からその店の性質を探ってみたり、とにかくぼくにとっては恰好の遊び道具だ。「一九ラーメン」のメニューを見て感じたのは「誠実さ」だった。 壁に掲示されたメニューを見る。左からラーメン、大盛りラーメンと続き、右端の方に目をやると、めし、おにぎりとあった。提供される料理は、大きく括るとラーメンとご飯だけ。餃子、チャーハン、そういったサイドメニューは置かない。鮮やかな手付きで平ザルを操り、羽釜に泳ぐ麺を一まとめにしながら「昔からずーっとこの品書きでやっていますね」と店主・岩井満則さんが教えてくれた。